妊娠の成立
妊娠成立までの流れ
妊娠はいくつかの段階を経て成立します。一つでもうまくいかないと妊娠は成立しません。種々の検査を行うことでそれぞれの機能を評価することもできますが、検査を行っても正常に機能しているか判断できないこともあります。
- ① 卵胞発育
- ② 排卵
- ③ ピックアップ
- ④ 精子
- ⑤ 受精
- ⑥ 胚の成長
- ⑦ 着床
卵胞発育
卵胞とは
卵胞は、卵子を保護し、栄養を供給する目的を持った構造で、1個の卵胞の中に卵子が1個入っています。卵巣にある卵胞が発育すると卵胞の中にある卵子が成長をします。この卵胞の発育はホルモンの働きによってコントロールされています。1度の月経周期でおよそ数百個の卵胞(卵子)が成長を始めます。最終的に排卵まで成長するのは主席卵胞と呼ばれる1個の卵胞(卵子)になります。
卵胞発育について
卵胞の発育は、卵巣の中で起こります。すべての卵胞が同調しているわけではなく、まだ原始卵胞の状態の卵胞もあれば、排卵直前の卵胞もあり、成長のスピードはバラバラです。思春期になると性腺刺激ホルモンの作用によって卵胞は成長を始めますが、同時に成長を始める原始卵胞は、数百個です。残りの卵胞たちは静かに順番を待っている状態です。
原始卵胞
一次卵胞と、それを囲む一層の扁平上皮細胞様の前顆粒膜細胞。
発育卵胞
原子卵胞が成熟卵胞まで発育する過程にある卵胞のこと。
グラーフ卵胞(成熟卵胞)
排卵の準備ができた卵胞。内部の卵胞液圧の増加に伴い卵巣表面に膨隆する。
排卵
成熟卵胞が発育、増大すると卵巣の表面に突出して破裂し、内部の卵子、卵胞液、顆粒膜細胞が排出されること。
黄体
排卵後、卵胞壁に残った顆粒膜細胞と胸膜細胞が肥大、増殖したもの。排卵後1~4日で完成し、プロゲステロンとエストロゲンを分泌する。黄体の寿命はほぼ14日。
白体
退行して変性した黄体や閉鎖卵胞が結合組織にとってかわったもの。
卵胞の数
将来、卵子となる細胞は卵巣にあり原始卵胞と呼ばれています。この原始卵胞は、女性が胎児の時にすでに作られています。原始卵胞は胎児期に細胞分裂を繰り返し、500~700万個まで増加します。しかし、その後数は減少し、生まれる時には約200万個になると言われています。生まれてから月経が始まる思春期頃には、この原始卵胞の数は170万~180万個に減少し、思春期や生殖年齢になる頃には20~30万個まで減少します。一人の女性が一生で排卵する卵子の数は400~500個と言われており、残りの原始卵胞は体内に吸収されてしまいます。
卵胞の発育の流れ
原始卵胞(primordial follicle)から一次卵胞(primary follicle)、二次卵胞(secondary follicle)へと成長します。二次細胞は前胞状卵胞(preantral follicle)と胞状卵胞 (antral follicle)という時期があります。成熟卵胞(mature follicle)であるグラーフ卵胞 (Graafian follicle)となり、排卵のへ準備を整えます。排卵直前の卵子は第二減数分裂の中期で分裂を停止しています。その後、精子の侵入が刺激となり減数分裂を再開します。
卵胞発育の状態を調べる検査
ホルモン検査によって卵胞の発育に必要なホルモンが正常に分泌されているかを確認します。また、超音波検査により卵胞の大きさ等を調べます。
排卵
排卵とは
卵巣(卵胞)から卵子が飛び出すことをいいます。同時に複数の卵胞が成長し、主席卵胞と呼ばれる卵胞が20㎜程に成長すると、卵子が卵胞から飛び出します。
排卵の時期
女性の基礎体温は、「低温期」と「高温期」の2つに分けることができます。排卵は低温期から高温期に切り替わるタイミングで起きていることが多いです。このタイミングのことを「排卵期」と呼ぶこともあります。基礎体温を毎日測定し記録することで排卵のタイミングを予測することもできます。しかし、排卵のタイミングには個人差やその時の体調等が影響することもあります。
排卵の仕組み
思春期になると脳の視床下部というところから性腺刺激ホルモン(GnRH)が分泌されます。このホルモンは脳下垂体を刺激し、ゴナドトロピンというホルモンが分泌されます。ゴナドトロピンには卵巣刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の2種類があります。卵巣刺激ホルモン(FSH)は卵巣に作用して卵胞の成長を促進します。また黄体形成ホルモン(LH)は排卵の誘発と排卵後の黄体化を促進する作用があります。また、これらのホルモンは視床下部と下垂体にも作用しホルモン分泌のバランスをとります。
FSHの作用により成長した卵胞からは、エストロゲンという卵胞ホルモン(E2)が分泌されます。卵胞からのエストロゲンの分泌量が増えると、LHの一過性の上昇が起きます(LHサージ)。このLHの一過性の上昇により排卵が起こります。排卵後、LHは卵胞に作用し黄体化を促進します。また、黄体からはプロゲステロン(P4)が分泌されます。プロゲステロンは妊娠の継続に関係します。
排卵の有無を調べる検査
ホルモン検査によって排卵に必要なホルモンの上昇があるかを確認します。また、超音波検査により実際に卵胞が排卵したかを確認することもあります。排卵日予測検査薬を用いて尿中のLHというホルモンの濃度を測定することで排卵の時期を測定することもできます。
ピックアップ
ピックアップとは
排卵により卵巣(卵胞)から飛び出した卵子を捕まえて卵管に取り込むことです。卵管の先端にある卵管采という器官が卵子をピックアップする機能を持っています。卵巣と卵管はつながっていないため、この卵管采が正常に機能していないと自然妊娠は困難となります。
卵管采が正常に機能しているかを調べる検査
子宮卵管造影検査や卵管通水検査により卵管の通過性や癒着の有無を調べることになりますが、卵管采が正常に機能しているかを調べるのは難しいのが現状です。
精子
精子が作られてから射精するまでの流れ
精子は、陰嚢の中にある精巣で作られます。精巣で作られた精子は精巣上体尾部に移動し成熟します。その後成熟した精子は精管膨大部というところに貯蔵されます。ここで、精嚢で作られた精嚢液と合わさり前立腺まで移動します。前立腺で前立腺液と合わさります。視覚的、精神的な興奮や刺激により体外へ排出されます。精子は膣内に射出されると膣内から子宮、卵管を通過し、受精の場である卵管膨大部まで移動します。
精巣
陰嚢内に左右2個あり体積はおおよそ20ml。
精巣上体
精巣で作られた精子を成熟させる場所で精子を貯蔵できる。
精管
精子が通る管。
射精管
射精時に精液が通る管。
精嚢
精液の約7割を占め、精子が運動するエネルギーを与える精嚢液を作る。
前立腺
精子、精嚢液、前立腺液を混合し、精液を作る場所。
尿道
射精時に精液を運ぶ管。
陰嚢
精巣を包む袋状の皮膚。
精管膨大部
精管が前立腺に入る末端部で袋状に膨らんだ部分で、射精直前に一時的に貯蔵される。
射出後の精子
膣内に射出された精子は、頸管を通り子宮に到達します。その後、精子は卵管を卵巣方向へ移動し、受精の場である卵管膨大部に到達します。射出された精子は女性の体内でおよそ3日間受精する能力を有していますが、それ以降は受精能力を失い死滅してしまいます。精子や子宮、卵管の状態によっては受精能力を有している時間は短くなることもあります。
精液検査について
精液量、精子濃度、運動率、精子の形態等を検査します。精液は数日(2~4日)の禁欲期間(射精しない期間)の後に用手法(マスターベーション)で全量を採取します。精液の性状は日によって変化するため、数回検査することが望ましいと考えられます。
- ★ 精子自動性指数は当院独自の測定項目。
- ※ 精子の形態評価は、厳密な検査方法を用いた場合
- ※ WHOラボマニュアルより
受精
受精とは
精子が卵子の中に侵入することをいい、受精は卵管膨大部と呼ばれるところで起こります。受精すると精子と卵子はそれぞれ変化を起こし、成長する(発生する)準備を始めます。
卵子の変化
卵子は精子が侵入すると減数分裂を再開します。第二極体を放出し、減数分裂を完了します。この分裂により卵子の染色体数は元の半分(23本)になります。
精子の変化
精子は卵子の中に侵入すると、頭部にある染色体がほどけて、卵子の染色体と合流する準備をします(脱凝縮)。
前核形成
卵子内に存在する精子由来と卵子由来の染色体は、それぞれ集まりその周囲に核膜が形成されます。これを前核と呼びます。正常に受精すると、2つの前核が確認できます。
胚の成長
胚発生について
受精した卵子は受精卵(胚)と呼び、胚は卵管を子宮方向に移動しながら成長します。卵管膨大部で受精した卵子は、受精卵(胚)と呼ばれるようになります。胚は細胞分裂を繰り返しながら卵管の中を子宮へ向かって移動します。排卵してから子宮にたどり着くまでの期間はおよそ4~5日と考えられています。
胚の成長過程
胚は、細胞分裂を繰り返し成長していきます。細胞の数は1個(1細胞)から2個(2細胞)、4個(4細胞)と増えていきます。細胞の数が8個(8細胞)以上になると、細胞同士が融合し始め1つの細胞の様に見える状態になります。
この後、胚の中に胞胚腔と呼ばれる空間ができ、胚盤胞と呼ばれる状態になります。胚盤胞では将来胎児になる細胞(Inner cell mass:ICM)と将来胎盤になる細胞(Trophoblast)が確認できるようになります。胚盤胞まで成長した胚は、その後胞胚腔が広がります。胞胚腔が広がるにつれて胚の周囲にある殻(透明帯)は薄くなり、やがて亀裂が入ります。その亀裂から胚が外に脱出を開始し最終的には完全に透明帯から脱出します。
透明帯から脱出した胚は、子宮内膜へ着床し妊娠が成立します。
着床
着床とは
卵管の中を移動しながら成長した胚が子宮へ到達し、子宮内膜にもぐりこみ、母体の血管から栄養を吸収するようになることをいいます。
着床の流れ
卵管を移動しながら成長した胚は受精後4日目ごろ子宮に到達します。子宮に到達した後も胚は成長を続けますが、この間は子宮の中に浮かんだ状態になっていると考えられています。受精後7日目頃になると子宮内膜の表面に絨毛という組織ができます。成長した胚はこの組織に取り付き、組織の中にもぐりこみます。その後受精卵は絨毛を生やし、この絨毛は子宮内膜の奥へ奥へともぐりこみます。やがて、母体の血管から胎児に発育に必要な栄養や酸素を受け取るようになります。
着床のタイミング
胚はいつでも着床できるというわけではありません。子宮内膜に取り付くことができるのは、排卵後6~10日目の期間だけと考えられています。この期間のことを着床ウインドウ(implantation window)と呼びます。この着床ウインドウの期間には個人差があるため胚が取り付ける期間が短い人もいます。
着床機能を調べる検査
- ホルモン検査
- 子宮鏡検査
- 子宮卵管造影検査





























